【年間100本以上】映画を観る私のおススメ「アカデミー国際長編映画賞おすすめ作品10選」

こういった悩みにお答えします。

今年はアカデミー賞やカンヌ国際映画祭が新型コロナの影響を受け、延期になってしまいました。（2021年3月）
そんな今こそ過去作品を振り返り、その中で映画好きな私が「アカデミー国際長編映画賞」に輝いたおすすめ作品を10選ご紹介したいと思います。

「アカデミー国際長編映画賞」と「カンヌ国際映画祭パルム・ドール」を同時受賞した作品は「あわせて読みたい」の記事でご紹介しています↓

・パラサイト （第92回アカデミー国際長編映画賞/第59回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞）
・愛・アムール （第85回アカデミー国際長編映画賞/第65回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞）
・ペレ （第61回アカデミー国際長編映画賞/第41回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞）

ニュー・シネマ・パラダイス（1988年・イタリア）

第62回受賞作品

ジュゼッペ・トルナトーレ監督・脚本。
カンヌ映画祭審査員特別グランプリ、ゴールデングローブ賞外国映画賞など数々の賞に輝いた不朽の名作です。

あらすじ

映画監督として成功をおさめたサルバトーレのもとに、老いたアルフレードの死の知らせが届く。彼の脳裏に、「トト」と呼ばれた少年時代や多くの時間を過ごした「パラダイス座」、映写技師アルフレードとの友情がよみがえってくる。

引用：映画.com

『ニュー・シネマ・パラダイス』みどころと感想

この映画を思い出すと、戻らない時間を知り、郷愁に駆られて泣きたくなります。
主人公が体験した気持ちそのものを大いに味わい尽くすように、さまざまな感情が沸き起こっていくのを感じるでしょう。

古き良き時代。
村に小さな映画館が誕生し、人々の生活が活気にあふれます。
映画館という非日常の時間が流れる特別な空間で、愛や夢を語り、笑いや涙が生まれるその風景は現代社会で忘れてしまった何かを思い出させます。

少年トトにとって映写室の技師アルフレードは、映画を操るヒーローのように見えたでしょう。
怒鳴られても映写室に目を輝かせて顔を出すトトは、アルフレードの中にある不器用な優しさに居心地の良さを感じていたのかも知れません。
師弟とも友情とも言える関係ですが、どんなときでも背中を押してくれる存在が、トトの人生を大きく羽ばたかせていきます。

映画はエンリオ・モリコーネの音楽がうねりをつけ、クライマックスへと感動に導き、観る人の心を揺さぶります。

1988年、東京銀座にあるミニシアター「シネスイッチ銀座」でひっそり上映されたこの単館作品は、その後いくつもの映画館でアンコール上映され続けています。
まさにこの作品同様、多くの人が映画館を愛したように、訪れる人々への贈り物として今も映画館に光を灯し続けているのです。

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海を飛ぶ夢（2004年・スペイン）

第77回受賞作品

アレハンドロ・アメナーバル監督、脚本。
ヴェネツィア国際映画祭審査員特別賞、男優賞、ヨーロッパ映画賞監督賞、男優賞受賞、アカデミー外国語映画賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞など多くの賞に輝きました。

あらすじ

25歳の時から事故で30年もの間全身麻痺に陥っている男ラモン・サンペドロが、カトリック社会のスペインで、尊厳死を勝ち取ろうと裁判を起こしたラモンが書いた自伝を映画化。主演のバルデムが5時間にも渡るメイクで老け役に挑戦したことも話題になった。

引用：映画.com

『海を飛ぶ夢』みどころと感想

「死にたい」

そんな主人公ラモンの気持ちが手に取るように分かるのは、私が悲観的な性格だからでしょうか。

海の事故で脊髄損傷し、首から下が動かなくなったラモンは、スペインで初めて尊厳死を法廷に訴え自伝本に想いを託しました。

26年間動かない肉体に、全ての願望が閉じ込められた彼の心情を思うと、理解という言葉だけでは足りないように思います。
見果てぬ夢を見続けること、それがどれほどの絶望を彷徨（さまよ）っていたことでしょう。

劇中同じ障害を持つ神父がラモンを諫（いさ）めます。
「生きていることはそれだけで意味があり素晴らしい」普段なら共鳴する言葉ですが、ここでは陳腐に思えてなりません。
それよりも死と向き合ったラモンの１つ１つの言葉が胸に刺さっていくでしょう。

また献身的に介護する義姉の存在が光ります。
寡黙（かもく）な義姉は、ときどきラモンの心を見透かすように声をかけ、その目は思いやりに満ちています。
「僕はなぜ死を望むんだ？」と思わず本音を吐きだすラモンの苦悩を、ほどよい距離感で静かに寄り添います。

海の音、海の風、海の青、そして海の果てしなさが、ラモンを自由の旅路へと駆け巡らせていくようで、その映像表現は観る人の心に躍動感を与えてくれます。

それぞれの複雑な胸中を絡ませ、どこにも答えのない「尊厳死」の問題を真摯に見つめさせる秀逸な作品です。

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サウルの息子（2016年・ハンガリー）

第88回受賞作品

ネメシュ・ラースローが監督、脚本。
第68回カンヌ国際映画祭ではグランプリを、第73回ゴールデングローブ賞では外国語映画賞を受賞しました。

あらすじ

1944年10月、アウシュビッツ＝ビルケナウ収容所。ナチスにより、同胞であるユダヤ人の死体処理を行う特殊部隊ゾンダーコマンドに選抜されたハンガリー系ユダヤ人のサウル。ある日、ガス室で生き残った息子と思しき少年を発見したものの、少年はすぐにナチスによって処刑されてしまう。サウルは少年の遺体をなんとかして手厚く葬ろうとするが……。

引用：映画.com

『サウルの息子』みどころと感想

もしかしたら見たことを後悔するかもしれません。

数あるホロコースト映画でも、本作はアウシュヴィッツ強制収容所を最も悲惨な形で映し出しています。

主人公はユダヤ系ハンガリー人サウル。
彼は収容所のガス室で殺されたユダヤ人の死体処理班として仕事を任されています。

収容所前で多くのユダヤ人が電車から降ろされ、彼らがガス室に入るのをサウルは黙々と手伝います。
断末魔の叫びの後に静かに転がる死体を運び、また次のユダヤ人を迎える準備に勤しみます。
この恐ろしい行程を日に何度もしているのか、サウルや同じ仕事をする仲間に表情はありません。

しかしサウルの感情が動いたのは、ガス室で瀕死（ひんし）になりながらも息をする少年の存在でした。
きちんと埋葬したい、そんな強い思いに駆られ収容所からの脱出を図ろうとします。

サウルの考えるあの手この手作戦は無謀で、取り憑（つ）かれた人間のように見えなくもありません。

しかし自分も同じように死にゆく運命を知るサウルにとって、少年の遺体は唯一の希望の証であるように見えます。

至近距離のカメラワークがドキュメンタリー感を強め、緊迫感を全面に押し出しています。
暗惨（あんたん）たる想いの先で見つけた一片の希望が、サウルに人間の尊厳を示すようで、そこに小さな奇跡を信じたくなるのです。

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善き人のためのソナタ（2006年・ドイツ）

第79回受賞作品

フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督、脚本。
ヨーロピアン・フィルム・アワード主要3部門制覇やLA映画批評家協会賞外国語映画賞受賞など多くの賞に輝きました。

あらすじ

秘密警察による反体制派への監視が行われていた冷戦時代の旧・東ドイツ。秘密警察局員のビースラーは、ある日“反体制派”と目される劇作家ドライマンを監視するように命じられる。ドライマンの家に盗聴器を仕掛けたビースラーだったが、彼の部屋から聞こえてきたピアノ曲「善き人のためのソナタ」に心を奪われてしまう……。

引用：映画.com

『善き人のためのソナタ』みどころと感想

鑑賞後は何ともいえない心地よさに酔いしれていきます。

人生に何度かこんな映画に出会えたら、やっぱり映画って人を幸せにすることができるんだなと改めて思えます。

時は1984年、まだドイツが東と西で分断されていた頃のお話です。

当時、東ドイツでは反体制的な思想を持つであろう民間人への監視のため、こっそり家に盗聴器が仕掛けられていました。
その監視役となったのが秘密警察の主人公ヴィースラーです。
孤独で堅物なヴィースラーですが、盗聴された住人に次第に肩入れしていく様子をミステリー仕立てに追っていきます。

住人の交わす愛や夢、芸術論や政治思想が少しずつヴィースラーの心を揺さぶります。
盗聴器から聴こえた「善き人のソナタ」のピアノ伴奏で涙を流す姿は、ヴィースラーが愛に渇望（かつぼう）していくのを感じるでしょう。
また同じ党員の卑劣さを知り、国家への忠誠心が失われていく様子をじわじわと描いていきます。

次第に住人に傾倒していったヴィースラーですが、その思惑とは裏腹に、クライマックスは翳（かげ）りを帯びます。
反体制の政治活動が暴かれ、登場人物たちはそれぞれ悲運を迎えますが、ストーリーはそこで終わることはありません。

罪深き道。もっと良い人生が歩めたかも知れなかった人生。
でも歩いた道は間違いではなく、誇りに満ちていることを教えてくれます。

そんな優しさに溢れたラストと、ヴィースラーの最後の言葉に深い感動の余韻をいつまでも味わわせてくれる良作です。

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2007年8月3日からDVDが発売開始されています。

別離（2010年・イラン）

第84回受賞作品

アスガル・ファルハーディー監督・脚本。
第61回ベルリン国際映画祭では最高賞である金熊賞を受賞、またファジル国際映画祭では監督賞、脚本賞、撮影賞、録音賞と観客賞を受賞するなど多くの賞に輝きました。

あらすじ

離婚の危機を迎えた夫婦を軸に、両親をつなぎとめようとする娘や、彼らの問題に巻き込まれてしまうもうひとつの家族の物語が絡み合い、複雑な人間心理を描き出していく。

引用：映画.com

『別離』みどころと感想

遠い異国イランは「宗教」「戦争」「独裁政権」といった危険なイメージが漂ってきます。

人々の暮らしは日本とかけ離れたものを想像しますが、本作を通し、介護、失業、離婚、子供への教育方針の違いなど、日本と共通した普遍的な問題と向き合っていることが分かります。

父親の介護を依頼した家族と、介護の仕事を引き受けた家族。
ちょっとした誤解からいがみ合いが生まれ、お互いを追い詰めていく人間の心理を辛辣（しんらつ）に炙り出します。

それぞれの登場人物の身の上は切実ですが、特にヘルパーのラジエーが不憫（ふびん）でなりません。
彼女は妊娠中でありながら小さな子を連れ、早朝から電車に乗って仕事に出なければいけないのです。
その境遇はストーリーを追うごとに明るみになり、イラン女性の極限な立場に同情を寄せます。

起きてしまったトラブルは、「言った、言わない」「知ってた、知らない」ことが重点となり真実が歪んでいきます。
自己保守のための主張によって、破滅に向かっていく２つの家族の縮図が悲しみを滲（にじ）ませます。

そして無宗教論者の多い日本では理解に苦しむところとなりますが、結果、信仰心が運命を定めてしまうという決着に思わず打ちのめされてしまうかも知れません。

独創的なサスペンス調で、目が離せない展開を繰り広げています。

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コーリャ　愛のプラハ（1997年・チェコ）

第69回受賞作品

ヤン・スヴェラーク監督・脚本。

あらすじ

民主化直前のチェコスロヴァキア（当時）を舞台に、気ままな独身中年チェリストと、5歳の少年の交流をハートフルに描いた一編。

引用：映画.com

『コーリャ　愛のプラハ』みどころと感想

子供の清らかさに、人生の学びを知ることがあります。

同じ目線に立つことでこれまで見てきたものが輝いて見えたり、あるいは些細なものに見えたりして価値観が大きく変わっていくのを感じます。
守るべきものの愛おしさが、人生の新たな喜びを教えてくれているのかも知れません。

それを体現するかのように、主人公ロウカは突然5歳のコーリャの父親となり生活を一転させます。
母親に置き去りにされたコーリャは大声で泣いてもいい年頃なのに、自分の立場が分かっているかのように悲しみを堪えています。
立ち尽くすロウカの前で、一人むせび泣くその姿はいじらしく見る人の涙を誘います。

母国の違う2人。
言葉が通じず、戸惑いながら始まった共同生活。

舞台となったのは1988年、ソ連軍の社会主義体制下にあったチェコの首都プラハです。
そこで起きた暗い時代背景を、皮肉にも互いの愛国心が心を通わすきっかけとするあたりにユーモアを覚えます。

少しずつ想い合う2人の時間が重なります。共に四季の訪れを楽しみ、架空の誕生日を祝う。
つつましい暮らしが温かく彩られ、鑑賞後には多幸感を肌に感じることができる作品です。

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2000年11月24日からDVDが発売開始されています。

ノー・マンズ・ランド（2001年・ボスニア、ヘルツェゴビナ）

第74回受賞作品

ダニス・タノヴィッチ監督、脚本。
ゴールデングローブ賞 外国語映画賞、カンヌ国際映画祭 脚本賞、セザール賞 最優秀新人監督賞など多くの賞を受賞しました。

あらすじ

93年、ボスニア紛争下、ボスニアとセルビアの中間地帯“ノー・マンズ・ランド”に取り残された2国の兵士チキとニノの駆け引きに、彼らの周囲の国連防護軍や、マスコミの動きをユーモアを交えて描く。

引用：映画.com

『ノー・マンズ・ランド』みどころと感想

殺戮（さくりく）乱れる戦場で、ひとりの兵士に対する救命の矛盾を皮肉に描き出しています。

セルビア人とボスニア人。
信条が同じであれば仲間、信条が違えば敵となり、激しい憎悪を燃やし合います。

この敵対する兵士2人がノーマンズランド（中間地帯）で遭遇します。
仕掛けられた地雷の上で身動きできないボスニア兵を救出するため、作戦を立て合います。

下着姿でお互いの部隊に助けを乞う姿や、言葉が通じない国連防護軍にすべて「YES」と答える兵士、本部指揮官のチェスをしながらの電話指示の様子など、戦争を取り巻く人々の様子をコミカルに挟み込みます。

どこか呑気（のんき）に運ばれるストーリーは、戦場で起きている惨劇を忘れそうにもなります。

しかしボスニアの社会情勢の深刻さをさらりとニュース番組で伝え、見ている者の目を覚まさせます。

戦争の無益さを訴えるような反戦映画ではなく、ひたすら人間のエゴを浮き彫りにした作品です。
期待した展開と大きくかけ離れた結末は無力感に駆られますが、元兵士だった監督の痛烈なメッセージが響き渡ってくるでしょう。

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未来を生きる君たちへ（2011年・デンマーク）

第91回受賞作品

スサンネ・ビア監督。

あらすじ

デンマークで暮らす少年エリアスは学校でいじめられる日々が続き、医師としてアフリカの難民キャンプに赴任している父アントンの存在だけが心の頼りだった。そんなある日、転校生クリスチャンがエリアスをいじめから守ったことで、2人は親交を深めていく。一方、アフリカにいるアントンは自身の離婚問題や、ひん死の患者たちの存在に苦悩していたが、そんな彼の前に子どもや妊婦までも手にかける悪党が現れ……。

引用：映画.com

『未来を生きる君たちへ』みどころと感想

アフリカの難民キャンプに、ケガを負って運ばれてきた犯罪者。
妊婦を切り裂くこの極悪人を医師である父アントンは治療をするも、男の非情さを目の当たりにし救うことを拒みます。

イジメに悩む息子に暴力が暴力を呼ぶことや、争うことの愚かさを教えていながら、その道徳観に苦しめられる様は心寄せるものがあるでしょう。

寛容の心を持てば、人はもしかしたらもう少し生きるのは楽なのかも知れません。
でも世の中は不条理にあふれ、下劣な人間も確かに存在し理想論を打ち砕きます。

絶てない憎しみの連鎖を、アフリカとデンマークで起きる事件を対比させて見せていきます。

物語で登場するデンマークに来た転校生クリスチャンは、母の死への怒りが孤独や暴力性を生んでいるのが分かります。
彼の冷静さは、生きていることの嘆きを表しているようにも思えてなりません。

「なぜ人が人を傷付けるのか」そんな漠然とした人間の悲しい本質を織り込ませ、そこにもつれた家族が奇（く）しくも「罪」によって再生していくという見事な演出が胸を打ちます。

赦（ゆる）しを知る者だけに訪れる平安、そしてエンディングで次々と流れる自然の美しい情景に、心が救われていくのを感じることができるでしょう。

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2018年6月28日からDVDが発売開始されています。

セールスマン（2016年・イラン）

第89回受賞作品

アスガル・ファルハーディー監督・脚本。
カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で男優賞と脚本賞も受賞しました。

あらすじ

小さな劇団に所属し、作家アーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」の舞台に出演している役者の夫婦。ある日、引っ越したばかりの自宅で夫が不在中に、妻が何者かに襲われる。事件が表ざたになることを嫌がり、警察へ通報しようとしない妻に業を煮やした夫は、独自に犯人を探し始めるが……。

引用：映画.com

『セールスマン』みどころと感想

ある日突然、事件の当事者になってしまうことは誰にでも起こりうることです。

それにどう向き合っていくのか、当事者たちの心模様を移り変わるイランの暮らしを垣間見せながら描いています。

それまで平穏に暮らしていた若夫婦ですが、新居に越したことで運命が一変します。
被害者となってしまった妻ラナ。犯人捜しをする夫エマッド。
事件を明るみにしたくないラナですが、エマッドは犯人への復讐に執念を燃やします。
最初こそ明るく人に優しかったエマッドが、次第に怒りに支配されていくのが分かります。

復讐で事件を闇に葬（ほうむ）ることはできないけれど、何事もなかったように暮らすことはできません。
それなら犯人の人生も狂わせよう、エマッドの歪んだ正義感が想いを強めます。

でも復讐に終わりはなく、どこまでを到達点とすべきか答えはありません。
逆に復讐に近付くことで、虚しさとやり切れなさが広がっていきます。

聞きたかったのは犯人の懺悔（ざんげ）だったのか、絶望を知った犯人家族の慟哭（どうこく）だったのか。

残されたのは、決して晴れることのない心。

事件によって大きな苦しみや悲しみ、怒りを抱いても、これまで通り時は刻まれていきます。
それを演者になって、何食わぬ顔で生きることが傷ついた自分を守る術なのかも知れない、そう思わせる演出にイラン映画の芸術的センスの良さが伺えます。

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名もなきアフリカの地で（2001年・ドイツ）

第75回受賞作品

カロリーヌ・リンク監督、脚本。

あらすじ

第2次世界大戦下、ナチスから逃れるため祖国ドイツから、アフリカへ渡ったユダヤ人一家。その幼い娘レギーナは、料理人である現地民オウアや、周囲の子どもたちとの交流の中で、たくましく成長していくが、彼女の両親には複雑な思いがあった。

引用：映画.com

『名もなきアフリカの地で』みどころと感想

見知らぬ地の人々の温かさがじっくりと身に染みる映画です。

第二次世界大戦下、ナチスから逃げ延びたユダヤ人家族が目指した場所は遠い国アフリカでした。

ドイツで豊かな暮らしをしていた彼らは、アフリカでの生活の不自由を体験し望郷に駆られます。
特にドイツでユダヤ人がどんな悲惨な目に遭っているか知らない母親は、文句や泣き言ばかり言い続け、歴史を知る側から見れば彼女をあきれてしまうかも知れません。
この時代、生き抜くことがどれほど困難であったか諭（さと）したくもなるでしょう。

しかし次第に一家はアフリカの生活に溶け込み、数々の難題を乗り越え順応していきます。
雄大な大地が人々の情念をかき消すように、世界が広がって見えてきます。

乾いた風や眩しい太陽、音楽や人々の戯（たわむ）れを陽気に描きながら、一方イナゴの大群の襲来という自然の厳しさも映し込みます。

最も心を打たれるのは、アフリカの料理人オウアと、ユダヤ人の娘の関係です。
彼らの交流がハートフルに織り込まれ、言葉と文化を超えた人々のつながりを感動へと仕上げています。

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映画で世界を旅しよう！

いかがでしたか？

アメリカ以外の国でもたくさんの良作映画が作られています。

現地の街並みや文化、社会情勢を知るきっかけにもなると思います。
この機会にぜひ、旅する気分で世界各地の映画を覗いてみてください。