ゴールデンラズベリー賞って何?
どういう作品やスターが受賞しているの?
こういった悩みにお答えします。
今回はおさえておきたい映画賞の番外編として、映画好きの人たちがひそかに楽しみにしている、ちょっとユニークな映画賞をご紹介します。
その名はゴールデンラズベリー賞です!
毎年アカデミー賞前日に授賞式が開催されますが、とにかくこの賞がアメリカらしいユーモアにあふれた賞なので、ぜひ映画雑学にお役立て頂けたらと思います。
ゴールデンラズベリー賞について
- 開催国:アメリカ
- 開催月:毎年2月~3月(2021年は4月に延期)
- 開催場所:ロサンゼルス
ゴールデンラズベリー賞の受賞作品
- 2020年受賞作品:2021年4月24日発表
- 2019年受賞作品:キャッツ
- 2018年受賞作品:俺たちホームズ&ワトソン
- 2017年受賞作品:絵文字の国のジーン
- 2016年受賞作品:ヒラリーのアメリカ、民主党の秘密の歴史
- 2015年受賞作品:フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ/ファンタスティック・フォー
- 2014年受賞作品:Saving Christmas
- 2013年受賞作品:ムービー43
- 2012年受賞作品:トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part2
- 2011年受賞作品:ジャックとジル
- 2010年受賞作品:エアベンダー
映画人が悲鳴をあげる!ゴールデンラズベリー賞の特徴
賞と言えば、これまでの功績を称える栄誉あるものですよね。
でもこのゴールデンラズベリー賞は映画製作者や俳優たちにとって、全く不名誉きわまりなく迷惑な位置づけにあります。
それもそのはず、その年一番の最低(ワースト)映画をわざわざ選出し、賞を贈るという何とも恐ろしくブラックな賞です。
別名ラジー賞とも呼ばれ、受賞するとラジー俳優と揶揄されてしまうこともあります。
できたら受賞したくない賞ですよね。
対象とされるのは、どうしようもない役を演じた俳優や、くだらない作品、個性が強すぎて一般受けしない作品などに贈られます。
「ファンタビ」で有名になったエディ・レッドメインが2016年発表の最低男優賞にノミネートされたときはショックだったわ。
2021年度もアン・ハサウェイが最低女優賞ノミネートされているのよね。ラジー賞をひそかに楽しみにしながら、毎年冷や冷やするわ
ゴールデンラズベリー賞の歴史
他の名だたる映画賞と比べれば、歴史は浅く1981年に創設されました。
映画年間200本観る映画業界人のジョン・J・B・ウィルソンが、毎年アカデミー賞授賞式を観ながら友人たちとパーティーで「ワースト映画」を発表し合っていたところ、マスコミに大きく取り上げられました。
そのユーモアが買われ、正式にゴールデンラズベリー賞を表彰する映画祭が開催されるようになったのです。
ゴールデンラズベリー賞の名前の由来
「野次る、からかう」という意味の動詞「Razz(ラズ)」が語源となっています。
またトロフィーに金色のラズベリーが乗っていることから、「ゴールデンラズベリー賞」と呼ばれるようにもなりました。
ゴールデンラズベリー賞の投票権
驚くべきことに、ゴールデンラズベリー賞財団という団体が存在します。
新規入会金40ドル、継続金25ドルを年間支払いますが、誰でも加入できるシステムです。
「ゴールデンラズベリー賞」の投票権を買うためだけに存在する会員なんて不思議ですね。
アメリカらしい底知れぬユーモアを感じます。
不名誉なゴールデンラズベリー賞を受賞してしまったスターや監督たち
【最低主演男優・最低主演女優編】
ここでは、ラジー賞の餌食になってしまった誰もが知る有名なスターをご紹介します。
◇シルヴェスター・スタローン
ラジー賞創設当初からほぼ毎年のようにノミネートされ、もはやこの人の名前がなくては始まらなくなってしまったラジー賞代表中の代表スタローン。
ノミネート歴15回、受賞は何と5回!
その長年の功績が称えられ(?)今世紀最大の最低男優賞も授与されています。
「ランボー」や「ロッキー」シリーズは製作されるたび、ラジー賞会員を喜ばせていたようです。
しかしラジー賞入りするもヒット作につながるものも多く、スタローン独自路線は確立されたものとして意外にも愛されている結果ではないかと思います。
スタローン映画の中でも「デイライト」は良作だったと思うな
◇トム・クルーズ
いまだアカデミー賞を獲得していない意外なスターの1人ですが、ゴールデンラズベリー賞ではノミネート歴が3回あります。
「カクテル」「宇宙戦争」では受賞を逃れましたが、ついに「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」で受賞を果たしてしまいました。
いつものように体当たり演技を見せてくれ、見応えのある大作だったのですが、役どころや古代絡みの中途半端な脚本が良くなかったのでしょうか。
そもそもトム・クルーズは批評家から演技力の高さも認められています。
「7月4日に生まれて」や「ザ・エージェント」ではアカデミー賞にノミネートされるなど捨て身の演技に挑んできました。
毎回心血注ぐ「ミッション:インポッシブル」シリーズも高い身体能力に圧倒させてくれますが、ラジー賞会員はそんなトムにも容赦ないようです。
◇マドンナ
歌手のマドンナがラジー賞に名前を上がるのも不思議ですが、マルチに活躍する彼女は映画出演本数17本もあります。
その中でラジー賞ノミネート歴は6回、そして受賞歴は5回。
さらにスタローンと並び、今世紀最大の最低女優賞も授与されています。
おもに「BODY / ボディ」「2番目に幸せなこと」などで受賞していますが、有名なのは「スウェプト・アウェイ」ではないでしょうか。
この年、当時マドンナの夫であったガイ・リッチーが同作で最低監督賞を受賞しています。
そんな鳴り物入りのマドンナですが、映画製作への意欲が高く、監督や脚本執筆など精力的に活動を続けています。
「エビータ」ではゴールデングローブ賞で女優賞を獲得しているわよ
◇キャメロン・ディアス
2018年に引退宣言をしてますが、ハリウッドのトップ女優として数々のヒット作に出演してきました。
「マスク」では妖艶な魅力を披露し、鮮烈なデビューを飾ったキャメロン。男性だけでなく多くの女性ファンも生み出し、その明るく華やかな美しさはハリウッド界でもひと際輝いていました。
コメディ・サスペンス・アクションとジャンルを広げ、いつしか母親役も型にはまってきましたが、ラジー賞では3回ノミネートされています。
そして2015年「ダメ男に復讐する方法」「SEXテープ」の2本で虚しく受賞してしまいました。
今は子育てに専念しているキャメロンですが、いつしか50代、60代となって女優業に復帰し、ラジー賞を挽回してほしいです。
【最低監督編】
次はラジー賞の代表となってしまった有名監督をご紹介します。
◇M・ナイト・シャマラン
出世作となった「シックス・センス」は、センセーショナルな作品として話題を呼び、ホラーでありながら映画史に残る名作として刻まれました。
卓越したオリジナルストーリーを生み出したシャマラン監督はたちまち異彩を放ち、その後に製作される作品も不気味さや戦慄、見えない結末を軸に送り出していますが、実はラジー賞対象となる作品の多さでも有名です。
ノミネート歴4回、受賞は2回という、監督としては最多の記録を持っています。
主に「ハプニング」「レディ・イン・ザ・ウォーター」「エアベンダー」などでノミネートされています。
度肝を抜く、そんなスタンスが賛否両論を生んでしまっているのかも知れません。
「ヴィジット」では、老夫婦の奇行がおかしすぎてホラーとして観れなかったなあ
「サイン」では地球外生命体をTV画面で観たときのホアキン・フェニックスの大袈裟な演技が笑えたよ。シャラマン作品では大真面目に演技する役者たちがいい味出すよね
何とかゴールデンラズベリー賞を死守中!のスターたち
◇ジョニー・デップ
アカデミー賞にもなかなか縁のないジョニーですが、ラジー賞でもノミネートのみで終わっています。
ノミネート歴は4回、それも4年連続なのでラジー賞会員に狙われているのかも知れず、もはや受賞は時間の問題になりつつあるようです。
「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」「ローン・レンジャー」などで候補になっていますが、個性的な役どころが見どころなので、そのままジョニーらしく突き進んでほしいですね。
ティム・バートン監督作品のジョニーは生き生きとした演技を毎回見せてくれるよね
◇キアヌ・リーブス
「スピード」「マトリックス」シリーズで、アクションスターとして不動の地位を築いたキアヌ。孤高のスターという感じで、ミステリアスな雰囲気がカッコいいですよね。
しかし作品選びはどこか迷走しがちで、ラジー賞対象になるような際どい作品に出演しているのも否定できません。
「チェーン・リアクション」「JM」や「雲の中で散歩」とノミネート歴は3回。
最近は「ジョン・ウィック」シリーズで返り咲いたので、このままラジー賞会員の目から離れることを願うばかりです。
◇アンジェリーナ・ジョリー
「17歳のカルテ」ではアカデミー賞助演女優賞を獲得し、演技力が認められてトップ女優の座に躍り出たアンジー。強い女性を演じることが多く、その演技は気迫に満ちていて、特に「怒り」「悲しみ」の表現が強烈に伝わってきます。
アクションもこなせるセクシー女優という立ち位置は貴重ですが、ラジー賞会員は彼女にもしっかりと目を付けノミネート歴は4回あります。
それも大ヒットとなった「トゥームレイダー」シリーズでノミネートされ、代表作でもあったためにアンジーの不快感は大きかったことでしょう。
最近はすっかり表舞台から消えてしまっているので、ラジー賞からも遠のきました。
ゴールデンラズベリー賞の伝説的な授賞式
アカデミー賞授賞式前夜に開催されるゴールデンラズベリー賞ですが、受賞会場に受賞者が現れることはめったにありません。
それもそうですよね。
不名誉でしかないのですから。そもそも映画人は相手にしていない授賞式です。
しかし、サンドラ・ブロックとハル・ベリーは、最低女優賞のトロフィーをもらうために会場を訪れた数少ない受賞者です。
「ウルトラ I LOVE YOU!」で最低女優賞を授与されたサンドラは、壇上で「本当に最低の演技だったかどうか再考して」と映画DVDを会場中に配るというパフォーマンスを見せてくれました。
また、「キャット・ウーマン」で最低女優賞を授与されたハル・ベリーは、「夢じゃないの!?信じられない!」と言って壇上に上がり、獲得済のオスカー像と受け取ったばかりのラジー像を抱え、かつてアカデミー賞主演女優賞を受賞したときのスピーチをパロディして涙を流すという伝説的な一場面を盛り立てました。
どちらも聴衆から拍手喝采が贈られ、好感度を大きく上げたわね。度量が深いわ
日本にもあった!最低作品映画賞「HIHOはくさい映画賞」
何と日本でもゴールデンラズベリー賞に値する最低映画賞があります。
映画雑誌『映画秘宝』で映画業界人や映画ファンが投票者となり、その年の最低映画作品、監督、脚本家、俳優がランキングされます。
邦画だけではなく洋画も含まれており、その結果はベスト映画ランキングにもWランクインされるものもあり、興味深いものとなっています。
HIHOはくさいアワード(2019年度)
- 1位:ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
- 2位:ターミネーター:ニュー・フェイト
- 3位:ジョーカー
- 4位:トイ・ストーリー4
- 5位:サスペリア
- 6位:Diner ダイナー
- 7位:アド・アストラ
- 8位:アリータ: バトル・エンジェル
- 9位:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
- 10位:新聞記者
「ジョーカー」や「トイ・ストーリー4」が入っているなんて…!
まとめ
自分の好きな作品や俳優が「最低賞」に選ばれてしまったら、ちょっと不愉快ですよね。
でも、ラジー賞会員の目の付け所がユーモアにあふれ、また誰にも容赦せず一刀両断するので、映画に対してこれまでと違った見方を示してくれたりもします。
また、ゴールデンラズベリー賞を受賞したスターたちは、意外にもその後大きく飛躍する人も多いので目が離せない賞の1つとなっています。
ぜひ注目してみて下さい。
過去受賞作品はVOD(映画動画配信サービス)で観れますよ。
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